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酒井抱一筆「四季花鳥図屏風」周辺(十) [酒井抱一]

その十 鈴木其一筆「朝顔図屏風」と宗達筆「雲龍図屏風」・「風神雷神図屏風」周辺

其一・朝顔図屏風一.jpg

鈴木其一筆「朝顔図屏風」六曲一双 紙本金地著色 各一七八・〇×三七九・八㎝
メトロポリタン美術館蔵(再掲)→ (其一・金地・「綺麗さび」の「綺麗」)→ (図一)

宗達・雲龍図屏風一.jpg

俵屋宗達筆「雲龍図屏風」六曲一双 紙本墨画淡彩 各一五〇・六×三五三・六㎝
フリア美術館蔵 (宗達・墨画・「綺麗さび」の「さび」)→(図二)

宗達・風神雷神図一.jpg

俵屋宗達筆「風神雷神図屏風」二曲一双 紙本金地淡彩 各一五四・五×一六九・八㎝
建仁寺蔵 → (図三)

其一・風神雷神図襖一.jpg

鈴木其一筆「風神雷神図襖」四面裏表 絹本著色 各一六九・〇×一一六・〇cm
東京冨士美術館蔵→ (図四)

 上記の、其一筆「朝顔図屏風」(図一)と宗達筆「雲龍図屏風」(図二)・「風神雷神図屏風」(図三)とについて、前回、次のように指摘されていることを紹介した。

【 宗達の「雲龍図屏風」(フリア美術館)に通じる構図であり、「風神雷神図屏風」(建仁寺)を源泉として、これに触発され、影響を受け、翻案された一連の琳派における一双形式の屏風の構成に沿うものである。屏風における左右の対比は、流派を問わず珍しいことではない。其一が、朝顔という単一の植物を取り上げて屏風を制作するに当たり、琳派の伝統である「燕子花図屏風」におけるモチーフを反復させる構図色彩がおそらく意識されたのだろう。さらに六曲一双という大画面の構図を思案する際に、抱一が光琳を顕彰しつつ翻案した屏風の制作に寄り添うような、左右が拮抗しあう構成の「朝顔図屏風」であった。 】
(『鈴木其一 江戸琳派の旗手(読売新聞社刊)』所収「作品解説(石田佳也稿)」)

 この宗達の「雲龍図屏風」(図二)の右隻の龍は「降り龍」(「下化衆生」の龍)、左隻の龍は「昇り龍」(「上求菩提」の龍)で、その「降り龍」と「昇り龍」とが、それぞれ姿勢を反転させて、相互に睨み合っている図柄なのである。
 そして、其一の「朝顔図屏風」(図一)の右隻の朝顔図が、宗達の「降り龍」、その左隻の朝顔図が、宗達の「昇り龍」の格好で、その両者が見事に絡み合い、絶妙なコントラスト(対比)的な空間を生じさせている。
 宗達の「雲龍図屏風」(図二)が、「龍図」の具象的、「雲・波図」の半具象的な描法に比して、其一の「朝顔図屏風」(図一)は、「朝顔図」そのものは具象的なのだが、「あたかも空中に浮遊させるがごとく」、全体として、極めて抽象的な描法の一端も見てとれる。
 と同時に、宗達の「雲龍図屏風」(図二)が、「黒と白」との「水墨画」の極致とするならば、其一の「朝顔図屏風」は、「金地に群青と緑青」との「装飾画」の極致という見事な対比となっている。
 其一は、師の抱一から多くのものを学んでいるが、その抱一が多くのものを学んだ光琳、そして、宗達の、いわゆる、「琳派」の、その根元を正しく継承していることを、この両者を対比させて鑑賞していくと、そのことを実感する。

 次に、上記の「風神雷神像図(図三・図四)」関連については、下記のアドレスの「風神雷神図幻想」などで触れているので、ここでは、主として、「朝顔図屏風」(図一)との関連についてのみ記すことにする。

https://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18

 其一の「朝顔図屏風」(図一)、宗達の「雲龍図屏風」(図二)・「風神雷神図屏風」(図三)は、いわゆる、移動性の「屏風絵(画)」に比して、其一の「風神雷神図襖」は、建物に付属している「襖絵」という違いがある。
 本来は、これらの障壁画(襖絵、杉戸絵、壁貼付絵、天井画、屏風絵、衝立絵などの総称)は、建物の空間と密接不可分のもので、それらを抜きにして鑑賞することは十全ではないのかも知れないが、逆に、それらの本来の空間がどういうものであったかを想像しながら、これの大画面の絵画を観賞する面白さもあるように思われる。
 例えば、この宗達の「雲龍図屏風」(図二)は、「落款が両隻を並べた場合内側となる部分にあることから、並置するのではなく、向かい合わせに置くことを意図していたと推測される」(『琳派四 風月・鳥獣(紫紅社刊)』)と、そもそもは、其一の「風神雷神図襖」(図四)と同じような意図で制作されたものなのかも知れない。
 さらに、この其一の「風神雷神図襖」(図四)も、襖四面の「裏と表」に描かれていると、上記のように、並置しての、右隻の「風神図」と左隻の「雷神図」との対比が希薄化される恐れがあるように思われる。

 ここで、改めて、上記の四図を見ていくと、この其一の「朝顔図屏風」(図一)は、宗達の「雲龍図屏風」(図二)、そして、其一の「風神雷神図襖」(図四)は、宗達の「風神雷神図」(図三)を、それぞれ念頭に置いて制作したのではないかという思いを深くする。
 と同時に、其一は、宗達の「黒と白」との「水墨画」の極致の「雲龍図屏風」(図二)を、「金地に群青と緑青等の装飾画」の極致の「朝顔図屏風」(図一)に反転させ、そして、宗達の「金地に緑青等の装飾画」の極致の「風神雷神図屏風」(図三)を、「黒と白と淡彩の水墨画」の極致の「風神雷神図襖」(図四)に、これまた、反転させているということを実感する。
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