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酒井抱一筆「四季花鳥図屏風」周辺(三) [酒井抱一]

その三 「四季花鳥図屏風」の右隻(夏)

四季花鳥図屏風夏拡大.jpg

酒井抱一筆「四季花鳥図屏風(右隻)」六曲一双 陽明文庫蔵 文化十三年(一八一六)
「右隻(四~六扇・夏)部分拡大図」

「作品解説」中の、「続いて夏の花、牡丹、鬼百合、紫陽花、立葵、撫子、下の方には河骨、沢瀉、燕子花に、やはり白鷺が二羽向き合い、水鶏も隠れている」という、右隻の第三扇(左半面)と第三扇~第六扇の絵図である。
 この「作品解説」の草花で、上記の絵図を見ていくと、右端(第三扇の半面)の上部に「牡丹」(初夏の季語)、その左下から順に、「鬼百合(仲夏の季語)・紫陽花(仲夏の季語)・立葵(仲夏の季語)・撫子(初秋の季語)」、この草花群の下に、右から順に、「沢瀉(仲夏)・河骨(仲夏)・燕子花(仲夏)」が描かれている。
 この「沢瀉」と「河骨」の間に、黒っぽい「水鶏」(三夏の季語)、「河骨」と「燕子花」との間に左向きの「白鷺」(第四扇)、第六扇の「撫子」の上に、飛翔している右向きの「白鷺」(三夏の季語)が描かれている。

牡丹(ぼたん)「初夏・(ぼうたん、深見草、富貴草、白牡丹、牡丹園))」
 形見とて見れば嘆きのふかみ草なになかなかのにほひなるらん 藤原重家「新古今集」
 牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残哉     芭蕉 「野ざらし紀行」
 いにしへのならの都の牡丹持      其角 「其角発句集」
 牡丹散つてうちかさなりぬ二三片    蕪村 「蕪村句集」
 牡丹切て気の衰へし夕かな       蕪村 「蕪村句集」
 閻王の口や牡丹を吐かんとす      蕪村 「蕪村句集」
 地車のとゞろとひゞく牡丹かな     蕪村 「蕪村句集」
 低く居て富貴をたもつ牡丹かな     太祇 「太祇句選」
 扇にて尺を取りたる牡丹哉       一茶 「八番日記」
 美服して牡丹に媚びる心あり      子規 「子規全集」

百合の花(ゆりのはな)「仲夏・(鬼百合、鉄砲百合、笹百合、姫百合、車百合、山百合、鹿の子百合、透百合、白百合)」
 夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ 坂上郎女「万葉集」
 百合の花折られぬ先にうつむきぬ    其角 「其角発句集」
 飴売の箱にさいたや百合の花      嵐雪 「玄峰集」
 ひだるさをうなづきあひぬ百合の花   支考 「喪の名残」
 かりそめに早百合生けたり谷の房    蕪村 「蕪村句集」

紫陽花(あじさい、あぢさゐ)「仲夏・(かたしろぐさ、四葩の花、七変化、刺繍花、瓊花)」 
 飛ぶ蛍ひかり見え行く夕暮にまほ色残る庭にあぢさゐ 衣笠内大臣「夫木和歌抄」
 紫陽花や藪を小庭の別座敷       芭蕉 「別座鋪」
 紫陽花や帷子時の薄浅黄        芭蕉 「陸奥鵆」
 あぢさゐを五器に盛らばや草枕     嵐雪 「杜撰集」
 あぢさゐに喪屋の灯うつるなり     暁台 「暁台句集」
 あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒     乙二 「乙二発句集」

葵(あおい、あふひ)「仲夏・(葵の花、花葵、銭葵、蜀葵、立葵、つる葵、白葵、錦葵)」
 葵草照る日は神の心かは影さすかたにまづなびくらん 藤原基俊「千載集」
 酔顔に葵こぼるる匂ひかな       去来 「有磯海」
 抱きおこす葵の花やさ月ばれ      蝶夢 「草根発句集」
 日に動く葵まばゆき寝覚かな      闌更 「半化坊発句集」
 葵草むすびて古きあそびかな      樗良 「樗良発句集」
 明星に影立ちすくむ葵かな       一茶 「享和句帖」
 鶏の塀にのぼりし葵かな        子規 「子規句集」

撫子(なでしこ)「初秋・(大和撫子、川原撫子、常夏)」
 萩の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花をみなへしまた藤袴朝顔の花 山上億良「万葉集」
 酔うて寝むなでしこ咲ける石の上    芭蕉 「栞集」
 なでし子にかゝる涙や楠の露      芭蕉 「芭蕉庵小文庫」
 かるがると荷も撫子の大井川      惟然 「けふの昔」
 かさねとは八重撫子の名なるべし    曾良 「奥の細道」

沢瀉(おもだか)「仲夏・(面高、花慈姑、生藺)」
 破れ壺におもだか細く咲きにけり    鬼貫 「大丸」
 沢瀉や花の数添ふ魚の泡        太祇 「太祇句選」
 沢瀉は水のうらかく矢尻かな      蕪村 「落日庵句集」

河骨(こうほね・かうほね)「仲夏・(かはほね)」
 河骨の終にひらかぬ花盛り       素堂 「いつを昔」
 河骨の二もとさくや雨の中       蕪村 「蕪村句集」
 河骨の金鈴ふるふ流れかな       茅舎 「華厳」

杜若(かきつばた)「仲夏・(燕子花、かほよ花、白かきつばた)」
 唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ 在原業平「伊勢物語」
 杜若語るも旅のひとつ哉        芭蕉 「笈の小文」
 杜若われに発句の思ひあり       芭蕉 「千鳥掛」
 有難きすがた拝まんかきつばた     芭蕉 「泊船集」
 杜若にたりやにたり水の影       芭蕉 「続山の井」
 朝々の葉の働きや燕子花        去来 「俳諧古選」
 宵々の雨に音なし杜若         蕪村 「蕪村句集」

水鶏(くいな、くひな)「三夏・(緋水鶏、姫水鶏、水鶏笛、水鶏たたく)」
 水鶏だに敲く音せば槙のとを心遣にもあけて見てまし 和泉式部「家集」
 水鶏啼くと人のいへばや佐屋泊まり   芭蕉 「有磯海」
 この宿は水鶏もしらぬ扉かな      芭蕉 「笈日記」
 関守の宿を水鶏にとはうもの      芭蕉 「伊達衣」
 夜あるきを田は寝ざりける水鶏かな   其角 「五元集捨遺稿」
 桃燈を消せと御意ある水鶏かな      蕪村 「落日庵句集」
 水音は水にもどりて水鶏かな    千代女 千代尼発句集」


白鷺(しらさぎ)「三夏・(こぼれ鷺・青鷺)」
 夕風や水青鷺の脛をうつ       蕪村 「幣袋」
 白鷺もこえて上野の杜涼し      子規 「子規全集」

花鳥巻夏一.jpg

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「夏(一)」東京国立博物館蔵
https://image.tnm.jp/image/1024/C0035817.jpg

花鳥図巻夏二.gif

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「夏(二)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035818

花鳥巻夏三.jpg

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「夏(三)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035819

 四季花鳥図巻」の草花は、上記の「夏(一)」は、「辛夷(仲春の季語)・姫百合(仲夏の季語)・麦の穂(初夏の季語)・罌粟(初夏の季語・紫陽花(仲夏の季語)」、その「夏(二)」は、「紫陽花・松葉牡丹(晩夏の季語)・鉄線花(初夏の季語)・芍薬(初夏の季語)」、その「夏(三)」では、「沢瀉(仲夏の季語)・河骨(仲夏の季語)・燕子花(仲夏の季語)」が描かれている。この「河骨」の後ろに、冒頭の「四季花鳥屏風」(右隻の第四扇)の「水鶏」が居る。この水鶏は「鷭(ばん)」で、「四季花鳥図」(右隻の第四扇)の水鶏も「鷭」であろう。

芦に白鷺一.jpg

酒井抱一筆「十二ヶ月花鳥図屏風」(六曲一双)の「左隻(第五扇)」(十一月)
「芦に白鷺図」(出光美術館蔵)
http://suesue201.blog64.fc2.com/blog-entry-660.html

 抱一の「十二ヶ月花鳥図」は、次の六種類のものが挙げられる(「酒井抱一」出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

一 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 絹本著色 十二幅 1823年(文政6年)
「十二か月花鳥図は、抱一晩年に複数制作された代表作。三の丸尚蔵館本には文政6年(1823年)の年紀があり、基準作として重要。出光や香雪本以外は掛軸12幅のセットだが、製作当初は全て絹本著色の六曲一双屏風に貼られていたと推定され、元は一具だったものが複数の所蔵先に分蔵されている例もある。「十二か月花鳥図」は藤原定家が「詠花鳥倭歌 各十二首」として各月を象徴する植物と鳥を選び和歌に詠んだ趣向(『拾遺愚草』収録)を、後世組み合わせて画題としたもの。江戸初期から狩野派や住吉派で描かれ、尾形乾山の作品にも見られる。抱一もこうした先行作に触発されたと思われるが、新たなモチーフに入れ替えたり対角線や曲線を多用するなどの工夫を凝らし、余白を生かした動きに富む花鳥図を生み出した。中には弟子の代作と見られる構図に纏まりのない作や緊張感のない緩んだ筆致も見られるけれども、伸びやかな描線や的確な写実など、抱一が最後に達した画境を示している。」→ ※十一月(水辺の白鷺・枯れ芦・小菊・山帰来)
二 畠山記念館蔵 絹本著色 十二幅 ※十一月(水辺の白鷺・鴛鴦・枯れ芦)
三 出光美術館蔵 絹本著色 六曲一双押絵貼(屏風)→※※十一月(水辺の白鷺・飛翔の白鷺・枯れ芦・小菊)
四 香雪美術館蔵 絹本著色 六曲一双押絵貼(屏風)→※十一月(木菟・雀・四十雀=四羽)
五 心遠館蔵  絹本著色 十二幅→※※十一月(水辺の白鷺・飛翔の白鷺・枯れ芦・小菊)
六 ファインバーグ・コレクション蔵 絹本著色 十二幅→※十一月(水辺の禽) 

 この他に、「亀田綾瀬賛」(亀田綾瀬は鵬斎の一子で江戸末期の儒学者)がある「諸家分蔵」のものがある(十二幅のうち五幅が現存する)。

七 諸家分蔵(亀田綾瀬賛) 絹本著色 → ※※十一月(水辺の白鷺・飛翔の白鷺・枯れ芦・小菊)

 上記の「芦に白鷺図」は、この「三 出光美術館蔵 絹本著色 六曲一双押絵貼(屏風)」の「左隻(第五扇)」(※※十一月=「水辺の白鷺・飛翔の白鷺・枯れ芦・小菊」)のものである。この図柄と全く同じものが、「五 心遠館蔵」(※※十一月)と「七 諸家分蔵(亀田綾瀬賛)」(※※十一月)で、以下に掲載をして置きたい。

芦に白鷺二.jpg 

酒井抱一筆「十二ヶ月花鳥図」(十二幅)のうちの「十一月(芦・菊・鷺)」
心遠館蔵(プライスコレクション) 各一四〇・〇×五〇・〇cm
【 一幅に一か月ごと、それぞれの季節の花と鳥または虫が組み合わされ描かれています。二幅ずつ対となる空間構成で、植物はのびやかに、鳥や虫は愛らしく配されています。】
(『東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました(日本経済新聞社)』)

芦に白鷺三.jpg

酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 「枯芦に白鷺図」 一幅 山種美術館蔵
一四二・〇×五〇・二cm
【 もと図一六四(桜に小禽図)、図一六五(菊に小禽図)と同じく十二ヶ月花鳥図のセットの内の一図で、十一月の図とみられる。枯芦に鷺図は室町以来の水墨画でよく描かれ、江戸狩野や京琳派にも作例は多い。『光琳百図』前編の下には、「紙本六枚折屏風墨画鷺之図」としてさまざまな姿の白鷺図が紹介されており、抱一はそうした先行図様を組み合わせたのだろう。さらに雪の降りかかる枯芦を大きく斜めに配して季節感の表出に工夫を加えた。 】
(『酒井抱一と江戸琳派の全貌(求龍社)』所収「図版解説(岡野智子稿)」)

【「一六四 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 桜に小禽図」「一六五 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 菊に小禽図」「一六五 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 枯芦に白鷺図」 
 十二ヶ月花鳥図の中でも最晩年の作。三図はもと同じ十二ヶ月花鳥図屏風を成していた。他に同屏風より「牡丹に蝶図」(フリア美術館蔵)「柿に目白図」(ファインバーグコレクション)が知られる。掛軸に改装する際、画面の一部を裁ち落としている図もあり、本来はもう少し大きい画面であったようだ。
 これらには抱一の親友の亀田鵬斎の子、綾瀬(りょうらん)(一七七八~一八五三)が七言絶句の賛を寄せる。綾は抱一より十七歳年下だが、文政九(一八二六)年に鵬斎は亡くなるので、その前後に抱一が綾瀬と親密に関わった可能性は高いと思われる。
 このセットは細い枝や茎を対角線状に配し、画面の上から下にゆったりとモチーフが下降する構図を特徴とする。最後の数年の抱一作品には花鳥画が少ないが、ここでは余白の中で鳥が要のような役割を果たし、抱一花鳥画の到達点を示している。
 「一六四 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 桜に小禽図(賛)略」
 「一六五 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 菊に小禽図(賛)略」
 「一六五 酒井抱一筆 亀田綾瀬賛 枯芦に白鷺図(賛)」
      西風吹冷至漁家片雪
      飛来泊水涯独立斜陽
      如有待擬邀名月伴戸
      花    綾瀬老漁               】 
(『酒井抱一と江戸琳派の全貌(求龍社)』所収「作品解説(岡野智子稿)」)

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