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酒井抱一筆「四季花鳥図屏風」周辺(二)

その二 「四季花鳥図屏風」の右隻(春)

四季花鳥図屏風春拡大.jpg

酒井抱一筆「四季花鳥図屏風(右隻)」六曲一双 陽明文庫蔵 文化十三年(一八一六)
「右隻(一~三扇・春から夏へ)部分拡大図」

「作品解説」(『酒井抱一と江戸琳派の全貌(求龍社)』)中の、「春草のさまざま、蕨や菫や蒲公英、土筆、桜草、蓮華草などをちりばめ、雌雄の雲雀が上下に呼応する」の「右隻一~三扇(面)」の絵図である。

花鳥巻春一.jpg

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「春(一)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035812

https://yahan.blog.so-net.ne.jp/2019-05-12

上記の図は、右から「福寿草・すぎな(つくし)・薺・桜草・蕨・菫・蒲公英・木瓜」(『日本の美術№186酒井抱一(千澤梯治編)』)のようである。

花鳥巻春二.jpg

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「春(二)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035813

https://yahan.blog.so-net.ne.jp/2019-05-14

その「春(一)」で描いた「蒲公英・木瓜・菫・すぎな(つくし)・薺・白桜草」などに、新たに「虎杖(いたどり)」と「雉(きじ)と母子草」を描いている(『日本の美術№186酒井抱一(千澤梯治編)』)。

 冒頭の「四季花鳥図屏風」(右隻第一扇~第三扇)は、上記の「四季花鳥図巻」(春一・春二)の草花が、宗達流の三層の丸みを帯びた土坡に描かれている。三扇の上部の「牡丹」は、次に続く夏の花の一部である。
 「四季花鳥図巻」を巻物(横長の紙に書いた絵や書をロール状に仕立てる、丸めて保管する)の横長の「巻子本」とすると、「四季花鳥図屏風」は屏風(複数枚に渡って絵や書を書いたパネルを横方向に連結する、折りたたんで保管する)の縦長の「折本」と見立てることも出来る。
 この「屏風」物は、例えば「六曲一双」物とすると、右隻(第一扇~第六扇)と左隻(第一扇~第六扇)の、十二扇(面)となり、「掛軸」(コンパクトな絵や書を主に床の間にかけて鑑賞できるよう仕立てる、丸めて保管する)物ですると、例えば、「十二ヶ月花鳥図」(十二幅)と同じ形式のものとなってくる。
 この「十二ヶ月花鳥図」(十二幅)の掛軸仕立てになっているものは、そもそもは、六曲一双の屏風物を改装したものが多いようである(また、これとは逆に、独立した図を貼る押絵貼屏風の形式もある)。
 そして、冒頭の「四季花鳥図屏巻」(六曲一双)は、「十二ヶ月花鳥図屏風」(六曲一双)ではなく、その右隻は「春・夏」(第一扇~第三扇=春、第四扇~第六扇=夏)、そして、左隻は「秋・冬」(第一扇~第三扇=秋、第四扇~第六扇=冬)の仕立てになっている。
 今回の右隻の「第一扇~第三扇=春」では、第二扇の「空高く舞い上がる揚げ雲雀」と第三扇の「揚げ雲雀を見ている地の雲雀」との呼応が(その空間)がメインとなって来よう。

雲雀(ひばり)(三春「告天使、初雲雀、揚雲雀、落雲雀、朝雲雀、夕雲雀、雲雀野」)「麦畑などに巣をつくり、春の空高く舞い上がって、一日中のどかに囀る。揚がる雲雀を揚
雲雀、落ちる雲雀を落雲雀という。雀よりやや大きく、褐色で黒褐色の斑があり、下腹は白っぽい。後頭部に冠羽をもつ。」
 うらうらに照れる春日にひばりあがり心かなしもひとりし思へば 大伴家持「万葉集」
 雲雀より空にやすらふ峠かな    芭蕉 「笈の小文」
 永き日も囀たらぬ雲雀かな     芭蕉 「続虚栗」
 原中や物にもつかず鳴雲雀     芭蕉 「続虚栗」
 一日一日麦あからみて啼雲雀    芭蕉 「嵯峨日記」
 草も木も離れ切たるひばりかな   芭蕉 「泊船集書入」
 松風の空や雲雀の舞ひわかれ    丈草 「そこの花」
 あつけりと人は残りて雲雀かな  千代女 「真蹟」 
 川越の肩で空見る雲雀かな     太祇 「石の月」
 夕雲雀鎧のの袖をかざし哉     蕪村 「落日庵句集」
 熊谷も夕日まばゆき雲雀哉     蕪村 「落日庵句集」
 庵室や雲雀見し日のまくらやみ   召波 「春泥発句集」
 声と羽と一度に休む雲雀かな    也有 「蟻づか」
 うつくしや雲雀の鳴きし迹の空   一茶 「七番日記」
 天に雲雀人間海にあそぶ日ぞ    一茶 「寛政句帖」

麦穂菜花図.jpg

酒井抱一筆「麦穂菜花図」双幅 静嘉堂文庫美術館蔵 重要美術品  
【いずれも春の景物。柔和な表現の菜花と、垂直に伸び連続する青麦の鋭い感覚とを対照的に取り合わせ、一羽ずつ配した雲雀の上下の動きが両幅を結びりつけるという、趣向に富んだ双幅である。季節の中の一片の表現や身近にいかにもありそうな風情を絵に描きとめる抱一の世界がここに確立されている。】
(『酒井抱一と江戸琳派の全貌(求龍社)』所収「図版解説(松尾知子稿))

 右の掛幅は「菜花と揚げ雲雀」図、左の掛幅は「麦穂と落ち雲雀」図である。「菜花(菜の花)」は晩春の季語、「雲雀」は三春の季語、「麦穂(穂麦)・麦秋(の穂)」は初夏の季語、「青麦(の穂)」は三春の季語、ここは、「麦穂(穂麦)・麦秋(の穂)」の初夏の景物としてとらえたい。この双幅は、冒頭の「四季花鳥図屏風」の右隻の「第二扇と第三扇」と同じく、右幅(第二扇)は晩春の景、そして左幅(第三扇)は初夏の景と解したい。

(参考)

渡辺始興雉.jpg

渡辺始興筆「鳥類真写図巻」(全一巻)中の「キジ(雉)図」
https://www.museum.or.jp/modules/topics/index.php?action=view&id=120

●河野元昭 「渡辺始興筆「真写鳥類図巻」について_(上)・(下)」『美術研究』290、291(1974年3月、4月)

●『創立百年特別展 琳派(東京国立博物館)』所収「作品解説189」
【 江戸中期の著名な宮廷文化人・近衛家煕(予楽院)<1667~1736>に家士として仕えた始興は、文芸の道に多彩な才能を示した家煕に教示されるところが多かった。『槐記(かいき)』(家煕の身辺を侍医・山科道庵が日記風に筆録したもの)にみえるように、家煕は絵画表現の基本に即物写生を重視している。始興は、この図巻のような遺作のほかに、数多くの写生画を制作していたものと思われる。なお、近世写生画の巨匠・円山応挙<1733~1795>が本図巻を模写しており、現在、当館に所蔵する写生画帖がこれである。】

「鳥類真写図巻」 渡辺始興 一巻 紙本着色 26.8×1758.0cm 「渡辺求馬始興筆意」

「四季花鳥図巻」酒井抱一 二巻 絹本著色 上巻 31.2×712.5cm下巻 31.2×712.5cm

※ 「鳥類真写図巻」(渡辺始興筆)は、「1758.0cm」、「四季花鳥図巻」は「712.5cm+712.5cm」
と、両者共に長大ものである。

上記の『創立百年特別展 琳派(東京国立博物館)』所収「作品解説189」中の「円山応挙<1733~1795>が本図巻を模写しており、現在、当館に所蔵する写生画帖がこれである」については、下記アドレスで、その全容を見ることが出来る。

「東京国立博物館(画像検索)」
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0078283/


雉図.jpg

円山応挙筆「写生帖(雉図)」(4帖の内1帖)42.1×30.6cm

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