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雨華庵の四季(その十六) [酒井抱一]

その十六「冬(二)」

花鳥巻冬二.jpg

酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「冬(二)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035827

花鳥巻冬二拡大.jpg

同上:部分拡大図

 上図の右側は、前図の冬柏の枯葉の枝に停まっている尉鶲(じょうびたき)で、それが突然、雪を被った尾花の景に様変わりする。左端の雪を被った梅の枝は、次図の一部分、中央の尾花の下部に描かれている赤い実は、山帰来(サルトリイバラ)の実であろうか。この絵図ですると、「冬柏」(枯柏葉=三冬)から雪を被った尾花の「雪」(晩冬)への季移りということになろう。この絵巻の全体からすると、この前図の「青木の実」(三冬)から冬の景で、冬でも青々としている「青木の葉」から、赤の「蔦紅葉」を這わせた冬柏、そして、秋に越冬するために渡ってきた「尉鶲」と枯葉をつけたままの「冬柏」への、「緑 → 赤 → 茶 」の世界から、この絵図の「雪尾花」の「雪」の「白」への変遷である。

雪(晩冬・「六花・雪の花・雪の声・深雪・雪明り・粉雪・細雪・小米雪・餅雪・衾雪・今朝の雪・根雪・積雪・べと雪・雪紐・筒雪・冠雪・雪庇・水雪・雪華・雪片・しまり雪 ・
ざらめ雪・湿雪・雪月夜・雪景色・暮雪・雪国・銀化・雪空・白雪・明の雪・新雪」)「雪は春の花、秋の月と並んで冬の美を代表する。雪国と呼ばれる日本海沿岸の豪雪地帯では雪は美しいものであるどころか、白魔と恐れられる。」
 たふとさや雪降らぬ日も蓑と笠     芭蕉 「芭蕉句選拾遺」 
 足あとは雪の人也かはかぶり      芭蕉 「むつのゆかり」
 市人よこの笠売らう雪の傘       芭蕉 「野ざらし紀行」
 馬をさへながむる雪の朝哉       芭蕉 「甲子吟行」
 二人見し雪は今年も降りけるか     芭蕉 「笈日記」
 雪の中に兎の皮の髭作れ        芭蕉 「いつを昔」 
 貴さや雪降らぬ日も蓑と笠       芭蕉 「己が光」
 酒のめばいとゞ寝られぬ夜の雪     芭蕉 「勧進牒」
 我雪とおもへば軽し笠のうへ      其角 「雑談集」
 花となり雫となるやけさの雪      千代女 「千代尼発句集」
 うつくしき日和となりぬ雪のうへ    太祇 「太祇句選」
 宿かさぬ火影や雪の家つづき      蕪村 「蕪村句集」 
 灯ともさん一日に深き雪の庵      白雄 「白雄句集」
 魚くふて口なまぐさし昼の雪      成美 「成美家集」
 寝ならぶやしなのゝ山も夜の雪     一茶 「旅日記」
いくたびも雪の深さを尋ねけり     子規 「子規句集」

尾花(三秋・「花薄・穂薄・薄の穂・初尾花・村尾花・尾花が袖・尾花の波」)「『芒』という季語が葉、茎、花の全体像を指すのに対し、『尾花』は芒の花だけをさす季語である。夏から秋にかけて二十センチから三十センチほどの、黄金色で箒状の花穂をつける。花穂は熟すにしたがって白っぽくなり、晩秋には白い毛の生えた種を風に飛ばす。動物の尾に似ているところから尾花といわれる。」
 花すすき寺あればこそ鉦が鳴る     末山 「続今宮草]
 武蔵野や鑓持もどく初尾花       言水 「誹枕」
 おもかげの尾花は白し翁塚       浪化 「そこの花」
 出帆まねく遊女も立てりはな薄     蓼太 「蓼太句集三稿」
 野の風や小松が上も尾花咲く      太祗 「俳諧新選」
 伸び上る富士のわかれや花すすき    几董 「井華集」
 むら尾花夕こえ行けば人呼ばふ     暁台 「暁台句集」
 猪をになひ行く野やはなすすき     白誰 「白雄句集」
 秋の日やうすくれなゐのむら尾花    青蘿 「青蘿句集」

草の実(三秋・「草の実飛ぶ」)「殆どの雑草は、花の終わった秋にそれぞれの実をつける。形や大きさはいろいろだが、その秋草の実をまとめて草の実という。」
 籠り居て木の実草の実拾はばや     芭蕪 「後の旅」
 草の実も人にとびつく夜道かな     一茶 「九番目記」

山帰来の花(晩春・「さるとりいばらの花・がめの木の花)「ユリ科の蔓性小低木。さるとりいばらを指す。蔓は固く、強い棘がある。晩春、葉腋から散形花序をだし、黄緑色の小花を球状につける。冬になると赤い実がとても良く目立つ。古くから生活に密着した植物で地方名が多い。」
 岩の上に咲いてこぼれぬ山帰来     鬼城 「定本鬼城句集」
 山帰来石は鏡のごとくなり         茅舎 「華厳」

其一・芒野図屏風.jpg

鈴木其一筆「芒野図屏風」二曲一隻 紙本銀地墨画 千葉市美術館蔵
一四㈣・二×一六五・六cm
【 二曲一隻の画面に芒の生い茂る野原が広がる。芒の穂先が形作る線は単調でありながら、しなやかで心地よいリズムを奏でている。中央にたなびく霞は、銀箔地の上に銀泥と墨を使い分けることによって表現されており、月光と霞によって幽暗な光がたちこめる芒野の静けさを醸し出している。この作品には「白椿に薄図屏風」(フリア美術館)という其一が描いた同工異曲の画面を含む屏風が存在する。これはとくに近代日本画を思わせる明快な色調と空間構成を備えた作例として早くから注目されてきたが、金地に白椿を描いた表絵に対して、薄(芒)の野原を銀地の裏絵として描いたもので、現在は二曲一双に改装されている。その対比的な取り合わせは、光琳が描いた金地の「風神雷神図屏風」(東京国立博物館)に対して、抱一が裏絵として描いた銀地の「夏秋草図屏風」(東京国立博物館)との関係を想起させるが、この「芒野図屏風図」に関しては、銀地のみを選んで微妙に改変させた作例として位置づけられている。画面には「為三堂」(朱文瓢印)と「其壱」が捺されている。其一の理知的なデザイン感覚を雄弁に物語る、印象的な屏風である。 】
(『鈴木其一 江戸琳派の旗手(読売新聞社刊)』所収「作品解説50(石田佳也稿)」)

 上記の解説中の「霞」とあるのは、「冬霧」と解すると、冒頭の、抱一の『四季花鳥図巻』の「雪を被った尾花図」と、色調、そして、雰囲気が二重写しになってくる。
 なお、この「芒野図屏風」(千葉市美術館蔵)と同工異曲の「フーリア美術館蔵」のものについては、下記のアドレスで触れている。

https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035827
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