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芦雪あれこれ(白象唐子(遊戯図)屏風) [芦雪]

(その十九)白象唐子(遊戯図)屏風(三種類)

 芦雪の「白象唐子(遊戯図)屏風」(六曲一双)は、応挙や芦雪関係の図録等で凡そ三種類のものを目にすることが出来る。
 それは、鉄斎堂蔵(京都・紙本金地着色)、鹿苑寺蔵(京都・紙本銀地着色)、そして、聖徳寺(福井・紙本銀地着色)のものである。
 これらのものについて、次に紹介したい。

白象・唐子.jpg

「A白象唐子遊戯図屏風」(芦雪筆)六曲一双(上記は右隻) 紙本金地着色 鉄斎堂蔵
各隻 一六六・〇×三六二・二cm

【右隻に「平安芦雪」とあるから、旅の途次か、または京都以外の地の注文によった作であろう。相見香雨『芦雪物語』によれば、芦雪が有名な厳島神社の「山姥図」絵馬を描いたおり、金時の体に使った朱が上質のものだったゆえ、その残りの絵具を用いて「唐子遊びの屏風」を制作したという。これがそれと決まったわけではないが、金箔を背景にした唐子たちの朱の効果は鮮烈そのもの。(狩野博幸稿)】『別冊太陽 長沢芦雪(狩野博幸監修)』

像と唐子.jpg

「B-1白象唐子図屏風」(芦雪筆)六曲一双(上記は右隻) 紙本銀地着色 鹿苑寺蔵
各隻 一四九・三×三五三・二cm

【右隻には画面いっぱいに白象が描かれ、それに唐子達が群がっている。前足の上に四人、鼻にも三人、頭上に二人、背中に五人、後ろ足付近に六人、臀部に十人、よちよち歩きの子供から腕白盛りの子供、少し大人びた少年と思しき子供までが、それぞれ思い思いに戯れ、画面から溢れ出んばかりに描かれている。象は切れ長の優しげな目で唐子達を見守っている。子宝と長寿、福寿をイメージさせる本図は唐子達のにぎやかな様子に目が惹かれる。(中略) 両隻共に空間には箔が貼られたような跡があり、箔足も明確に見えるが、なぜか黒ずみ、さらに上から絵の具が掛けられている。左隻の奥の山に生える小さな松の姿が影絵のように見えるが、それも山の際まで上から絵の具で塗りつぶされている。そしてさらに下地に描き込まれた文字が透けて見え、「此所皆金」とか「金」という文字が至る所に見える。したがって当初は左隻の背景の空の部分や左隻左側の雲、右隻の象の背景も金箔の指示がなされていたことがわかる。何らかの理由で現在は黒変しているが、画面は相当に傷んでいた模様で、過去の修理の際かなりの補筆・補彩がなされた可能性もある。これらの点については今後の調査研究を待ちたい。 】
(『円山応挙―相国寺・鹿苑寺(金閣)慈照寺(銀閣)所蔵』「作品解説 佐々木丞平・佐々木正子」)

唐子二.jpg

「B-2白象唐子図屏風」(芦雪筆)六曲一双(上記は左隻) 紙本銀地着色 鹿苑寺蔵
各隻 一四九・三×三五三・二cm

 これは、上記(「B-1白象唐子図屏風」)の左隻である。この左隻の下地に、「『此所皆金』とか『金』という文字が至る所に見える。したがって当初は左隻の背景の空の部分や左隻左側の雲、右隻の象の背景も金箔の指示がなされていたことがわかる」と、そもそもは、その背景は、「A白象唐子遊戯図屏風」のとおり、金箔であったのだろう。
 しかし、「A白象唐子遊戯図屏風」の左隻は、この「B-2白象唐子図屏風」の図柄ではなく、次の「C白象唐子遊戯図屏風」の左隻(左側六面)と同じ図柄なのである。

白象・唐子3.jpg

「C白象唐子図屏風」(芦雪筆)六曲一双 紙本銀地着色 聖徳寺蔵

 ここで、冒頭の「A白象唐子遊戯図屏風」(右隻)と、この「C白象唐子図屏風」(右隻)を比較鑑賞すると、全く、同じ図柄で、背景が、前者が金箔で、後者が銀地で、そのために、別種の印象を受けるのだが、この「C白象唐子図屏風」は、もともとは、金箔が施されていたのだが、「B-1白象唐子図屏風」と同じように、「何らかの理由で現在は黒変している」と解したい。
 そして、芦雪の、この種の「白象唐子遊戯図屏風」というのは、「A白象唐子遊戯図屏風」・「C白象唐子図屏風」と「B-1・B-2白象唐子図屏風」との二種類のものがあったと解したい。
 さらに、この種の、需要の多い、そして、六曲一双の屏風絵の大作のような場合は、尾形光琳や円山応挙の工房とかと同じように、芦雪の場合も、芦雪と弟子達(養子の芦洲等)と共同しての工房制作ということも、その背景にあるように解したい。

補記一 光琳工房等について

http://cca-kitakyushu.org/event_book/20151128/5/

光琳もまた、工房を抱えていた。一人で描いたというよりは、スタッフの助けを借りて描いていたんです。アメリカのメトロポリタン美術館に所蔵される《八橋図屏風》は、一見して《燕子花図屏風》とよく似ています。光琳がやはり晩年に描いた作品で、よく見ると、そこには花の群れによく似たパターンが見受けられます。つまり、《八橋図屏風》は《燕子花図屏風》を踏襲して描かれているんですが、さらに詳しく見ると、《燕子花屏風》では蕾が幾つも重なっているところが、《八橋図屏風》では蕾が一体化して一つの花のようになっているところがあります。《燕子花図屏風》を描いた光琳のスケッチ、型みたいなものをもとにして、新たに《八橋図屏風》を作る際に、スタッフが元々の形の意味を間違えて単純化したために、一つの花のようになってしまったと考えることができます。

現代の感覚だと、模倣は悪のように思えますが、近世以前の美術において、過去の作品を写すという行為はむしろ、なくてはならないものでした。今だと盗作だとか、まねしたんだろうとなってしまいますが、この時代は逆に、過去のものを勉強して、それらに典拠をおいて描いていくのが、絵師としては当然のマナーでした。例えば狩野派という流派では、先生が描いた絵の手本をたくさん蓄えておくというのはとても重要で、それに基づいて絵を描いていく。勝手に典拠もなく自由自在に絵を描くのは喜ばれず、むしろしかるべき典拠があることが重要でした。

光琳の場合は、狩野派的な典拠主義ではなくて、過去の遺産を積極的にアレンジしていこうとする傾向が強かった。宗達の作品を写す場合でも、むしろそこに生じる独自性の方が目に付きます。光琳の作品もまた重要文化財になっているのは、そこに光琳ならではの個性が表れているからでしょう。後の伊藤若冲なんかもそうですが、光琳は模写を通じて大きな飛躍を遂げた人で、光琳以前には、こういう例はあまりないように思います。光琳が通常の画家のトレーニングを受けていないということも関係があるかもしれません。しかしだからこそ、《燕子花図屏風》や《紅白梅図屏風》のような、それまでの絵の概念だけでは捉えきれないような造形作品を生み出し得たとも言えます。

補記二 唐子について(唐子は「男の子」で「女の子」は入らない)

『生誕三百年を祝う 若冲と蕪村』(岡田美術館編)所収「鼎談(河野元昭・小林忠・寺元晴一郎)

河野(元照) 中国では福禄寿ですね。福というのは子供。でも、女の子は入らない。中国の子宝は男の子だけ。だから唐子の絵というのは全部男の子が描いてある。それから、禄。これは俸禄でお金持ちになること。寿というのは長生き。
小林(忠) ためになるなあ。福は子宝か。
寺元(晴一郎) 幸せの方かと思った。

補記三 芦雪の「子供の愛らしさと謎」

『もっと知りたい 長沢芦雪(金子信久著)所収「子供の愛らしさと謎」

【 前半期から紀南行きの頃の作品では、特に描線が柔らかく、動きに富んでいる。場面設定も巧みで、この「唐子遊図屏風」(「その六」と同種の作品)などは、よくこんなにおかしな場面を考えたものだと呆れるほどである。
しかし、後半期には悩ましい作品もある。なぜか目が悲しげだったり、どこか複雑な心持ちを感じさせたり、ときに暗晦な雰囲気まで漂う。 】

 この芦雪の後半期の「暗晦な雰囲気を漂わせている」作品などの背景には、芦雪の亡き子供(特に、天明七年=一七八七に三歳で没した娘、寛政三年=一七九一)に二歳で没した娘)の幻影が、その背景の一つにあるように思われる。
コメント(4) 
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コメント 4

middrinn

名古屋の芦雪展に行かれた方の記事が
「アート」のとこに出てましたけど、
yahantei 様は観に行かれますか?
by middrinn (2017-10-09 16:25) 

yahantei

名古屋で芦雪展が? → どんなのが出品されているのか、興味がありくすね。
「アート」 → このサイトの「アート」、早速調べてみます。

※ 十九回続けて、次の二十で、「芦雪」から、「応挙」に行くか、「若冲」に行くか、と、このサイトのアップも大分慣れました。情報ありがとうございます。



by yahantei (2017-10-10 07:59) 

middrinn

So-netブログの「アート」の「はぐれ鳥うろちょろ記」というブログが
2日連続で芦雪展のことを記事にされてました(^^)
なお、同展の出品作は発売中の「芸術新潮」10月号が
第2特集として芦雪を取り上げているので、同誌を見ても大体は判ります(^^)
貴ブログの今後の展開も楽しみにしております(^^)
by middrinn (2017-10-10 09:41) 

yahantei

「はぐれ鳥うろちょろ記」のサイト見ました。



「若冲」さんの見直しがあったように、「芦雪」さんの見直しが、現在の衆議院の選挙(今日告示)のように、「上からではなく下から盛り上がる」(某代表のメッセージ)を期待したいですね(某女史は、どうにも、やはり、上から目線の感じですね)。
また、「芸術新潮(10月号)の情報ありがとうございます。
by yahantei (2017-10-10 16:02) 

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