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芦雪あれこれ(富士見西行図) [芦雪]

その十五) 富士見西行図

富士見西行図.jpg
「富士見西行図」(芦雪筆)一幅 紙本墨画淡彩 山形美術館蔵
一二九・八×二七・七cm

「鎌倉時代の歌人、西行は、家族を捨てて漂泊の旅に身を置いた。旅に憧れる人が多かった江戸時代らしい人気の画題だが、こんな図はほかに見たことがない。これでは首が痛くなりそうだ。」
(『もっと知りたい 長沢芦雪 金子信久著』)

 この評の「こんな図は見たことがない」、続く、「これでは首が痛くなりそうだ」というのは、素直な実感なのであろうが、何かが足りない感じがする。

「笠と杖を放り出して高い富士を見上げる西行の仕草に飄逸な味がある。晩年の作で、印は蒲鉾型の「長澤」「魚」(朱文印)である。」
(『日本の美術 №219 長澤芦雪 宮島新一編』)

 この評の「笠と杖を放り出して」は、「笠」は直ぐ分かるが、「杖」は気が付かない。この細長い「杖」と人(西行)の影が、三角形の富士山の頂上のようで、その頂上に西行が居るようにも見える。続く、「富士を見上げる西行の仕草に飄逸な味がある」の「飄逸な味がある」は、やや抽象的な表現で、やはり、何かが足らない感じがする。

 さて、「何が足りないか?」・・・・これは、ずばり、西行が富士を見上げて「小便をしている」、その仕草の面白さ、そして、和歌・連歌の「雅」の西行(歌人)を、俳諧・発句(俳句)の「俗」の西行らしきもの(俳人)へと転回した、その滑稽さと解したい。そして、そこに、芦雪の「遊びこころ」があると解したい。

 芦雪の「空間マジック」は、富士山の頂上を画面の外にはみ出させ、空は上部に三角形で「黒」、それに対比して富士(これも三角形)は「白」、下部の杖と人の影が、やはり三角形で、上部の空の三角形と響き合っている。それにしても、横幅が三〇センチ足らずなのに、縦長は一二九・八センチと、こういう細長い掛軸仕立てにするのも、これまた、芦雪の「遊びこころ」が充満している。

 芦雪の「遊びこころ」は、さらに、徹底していて、これよりも、さらに細長の横幅が十三センチに満たないものものある。下記の「象背戯童図」である。

「何が描かれているのか、すぐにはわからないが、画面の下の方にあるのは象の頭である。象はつぶらな目を少し上目遣いにして、何やら上の方に意識を向けているようだ。見れば、何と大勢の人。つまり、人間が大きな象の背に乗っているところである。当時の人々も、描かれた光景が理解できた瞬間、驚いたに違いない。ちょっと見ただけでは図柄がわかりにくいスリットのような細い空間を使って面白さを演出しているのである。」
(『もっと知りたい 長沢芦雪 金子信久著』)

象背戯童図.jpg
「象背戯童図」(芦雪筆)紙本墨画淡彩 一二八・二×一二・七cm

 この下部の「象の目と耳」の一部、それだけで、「象らしきもの」が察知される。この縦長の掛軸を四等分(下部・中一・中二・上部)すると、中部(中一・中二)は、「象の背中」ということになる。
 そして、上部の「象の尻」の部分に、「戯童」が何人居るか(?) この縮小されたものではお手上げである。
 しかし、実際の大きさ(一二八・二×一二・七cm)で、これを見れば、様々な恰好した「戯童」の仕草などが、はっきりと見分けすることが可能であろう。
 一番上部の「戯童」は両手を上げて万歳をしている。その前に、竹の棒を持って万歳している「戯童」がいる。その前に、「前向き・横向き・後ろ向きの戯童」が居て、尻から背にかけて寝転がっている「戯童」も居る。

象背戯童図3.jpg
「象背戯童図」(芦雪筆)上部の「拡大図」



コメント(4) 
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コメント 4

middrinn

「富士見西行図」の御解釈、たしかに面白いです^_^;
素人目には、笠の紐を結ぼうとしたら、飛ばされてしまい、
何処へ飛んだかと首を回した場面に見えます^_^;
富士見とは関係なくなっちゃいますけど^_^;
by middrinn (2017-09-28 19:38) 

yahantei

和歌のものが多いmiddrinnさんに「西行」もので、「風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな」(新古今)を書き添えようかと思ったのですが、この芦雪ものには、どうにも馴染まない。
それで、ついつい、芦雪の「遊びこころ」が伝染したらしい(?)
追伸
「170928読んだ本」(9/28)で、このスタートの時点のものは、
見ることが出来たら、ついでの折、教えて下さい。
by yahantei (2017-09-29 08:25) 

middrinn

たしかに富士の煙の行方を眼で追っていくと、
「首が痛くなりそう」ではありますけどね^_^;
お訊ねの件ですが、「このスタートの時点のもの」が
指しているものを小生が誤解してるかもしれませんが、
小生記事冒頭の枕(ポイントの当たるくじの話)なら、
「楽天ラッキーくじ一覧」で検索すると辿り着けますし、
当該記事本文冒頭の「センニン様の刺激的かつ有益なブックレヴュー」なら、
当該記事のコメント欄の「センニン」様の名前をクリックすれば、
「センニン」様のブログに辿り着くはずで、その27日付記事かと(^^)
以上、的外れな回答でしたら、ごめんなさいm(__)m
by middrinn (2017-09-29 10:47) 

yahantei

追伸の件は、middrinさんのブログにお邪魔して、コメント欄などでお尋ねします。
by yahantei (2017-09-29 15:49) 

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